坐薬挿入法
はじめに
一般的に坐薬は“最終手段!”という考えの人もおられ、臨床では「坐薬を入れましょう」と勧めても「坐薬は嫌です!」という方も多くみられます。
また、坐薬を入れなければならなくなった場合、「自分で入れるからいいです」と言われることもよくあります。それだけ、羞恥心を伴う処置になるということで、プライバシー保護の配慮が必要となります。
嘔気・嘔吐症状がある場合、飲み薬は刺激症状があり使えず、病院では注射が出来ますが、自宅に帰れば内服薬ではなく坐薬の処方が多くあると思います。また坐薬は、飲み薬をいやがる乳幼児にも用いやすく、確実な効果が期待できます。
今回は、坐薬についての正しい知識と方法を説明していきますね。
目的
1.痔疾患の治療
2.鎮痛・鎮静・消炎・収歛・解熱・鎮咳
3.排便を促す
必要物品
坐薬 トレイ トイレットペーパー 潤滑剤 ゴミ袋 未滅菌手袋 擦式消毒用アルコール製剤 必要時掛け物 必要時ディスポシーツ
方法・留意点
準備
- 医師から患者への与薬の説明内容を確認する
下痢や下血がある患者には挿入できない - 与薬目的・方法を説明し、患者の理解を確認し、了解を得る
肛門内に挿入された坐薬は体温で溶けはじめ、肛門のすぐ上に位置する直腸から吸収されます。
その後、静脈血流中に入り、心臓を経由して全身循環します。 - 手指衛生を行い、処方箋と薬袋を6Rの確認をして、1回量をトレイに指差し、声出し確認し準備する
①正しい患者 ②正しい薬剤 ③正しい量 ④正しい時間 ⑤正しい方法 ⑥正しい目的
座薬を切るときには、体温で溶けてしまうため、包紙ははがさずに包紙の上から切る

麻薬の場合、使用した後の残りは麻薬の取り扱いに準じて金庫へ保管しておき、まとめて薬剤部へ返納しましょう。
実施
- 患者のベッドサイドに行き、患者に氏名を述べてもらい、与薬トレイの氏名と一致していることを確認して与薬する
- 患者に説明し、排便を目的としているもの以外は排便を促す
- スクリーンをし、患者を側臥位または仰臥位にし、膝を曲げてもらう。不必要な露出を避けるために、掛け物を使用する 腸の走行上、左側臥位が望ましい
腹部の緊張を和らげ、腹圧がかからないようにし、肛門括約筋を弛緩させる - 患者にゆっくりと口呼吸をするように説明する
- 手指衛生を行い、坐薬の包紙をはずし、未滅菌手袋を装着し、先端に潤滑剤を塗布する
- 肛門を左手で開き、坐薬を尖った方から静かに肛門へ約4~6cm挿入し、未滅菌手袋またはトイレットペーパーで肛門部を2~3分おさえておく。 ・挿入が肛門内括約筋より浅いと坐薬が出てしまうおそれがある
・坐薬が押し出されるのを予防する
・排便を目的に挿入した場合は、10~20分程度保留するようにしてもらう - 患者に終わったことを告げ、ねぎらいの言葉を掛け、体位と衣服を整える
観察項目
- 坐薬がきちんと挿入されているか
- 薬効
- 副作用の有無
- バイタルサイン
挿入直後の排便により薬が外へ出てしまった場合は、もう1回分使用することになります。
挿入して10~15分以後に排出した場合は、薬がどのくらい吸収されたのかわかりませんので、次の使用まで4時間以上の間隔をおいて下さい。
記録
- 時刻
- 薬品の種類・量
- 患者の状態及び観察事項
- 与薬者名
さいごに
臨床で坐薬を使用するときは、血圧測定をし、血圧が下がっていないことを確認してから使用しましょう!
特にジクロフェナクナトリウムの座薬のを使用する場合に血圧低下が起こることがあります。
これは解熱鎮痛薬の効果により解熱し、発汗が多量になった場合に循環血液量が減少して血圧低下を起こすといわれています。
使用前・後で、体温や血圧の変動を確認することが大切です。
排便目的の坐薬使用も臨床ではよく行われますが、使用しても排便がないこともよくあります。
患者の状態に応じて、坐薬・浣腸・下剤の選択を考えていきましょう。
参考文献
1)竹尾 恵子:看護技術プラクティス第3版、学研メディカル秀潤社、2015
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