BS測定(簡易血糖検査)
糖尿病の患者は2017年で約329万人となり(2019年3月発表)過去最多数となりました。内科病棟に限らず、OP目的で入院される方、肺炎で入院される方など、既往に糖尿病がある患者は多くみられ、糖尿病の知識は看護する上で必須と言えます。
血糖測定=多くの現場では「BSチェック」と表現されます。→BS(blood sugar)
血糖値を調べる検査には血液検査のほかに、尿検査、ブドウ糖負荷試験など様々な種類があります。その中でも簡易血糖測定は使用頻度が高く、身につけておくべき知識です。
冷や汗の患者、けいれんを起こしている患者、あるいは意識混濁の患者が運ばれてきたとき、低血糖症状だとすぐに判断するためには、検査の予測ができ、迅速に準備ができ、正しく測定できることが重要です。(空腹時血糖値70~109(mg/dL))
今回は、簡易血糖測定の手順と注意点をまとめています。以前にアップした糖尿病と低血糖についての記事も参考にしてみてくださいね。
目的
血液中の血漿グルコース(血糖)の濃度を測定する
必要物品
血糖測定器、穿刺ペン 穿刺針 測定用チップ 消毒用綿(アルコール綿禁忌の人はクロルヘキシジングルコン酸塩含浸綿使用) 針廃棄ボックス 未滅菌手袋 除菌クロス 擦式消毒用アルコール製剤
方法・留意点
準備
- 流水と石鹸で手洗いをする
- 患者に検査の目的、方法を説明し同意を得る
- 患者に手洗いをし、水分は十分に拭き取るように説明し、実施を確認する
- 必要物品・血糖測定器の準備をする
測定用チップをつける
①電源を押し、全部の表示が点灯した後、現在の月日と時間が表示されるのを確認する
②血糖測定器の保護キャップを外す
③測定用チップのシールを剥がし、血糖測定器の先に確実に押し込む
④測定用チップのケースをはずし電源を入れ「OK」と表示されることを確認する
穿刺針をつける
①穿刺ペンの「深さ調節ダイアル」を回して刺入の深さを調節する。
目盛りが大きいほど深く刺入される
②穿刺針を穿刺ペンに真っ直ぐカチッと音がするまで押し込む。この時、プッシュボタンを押さないように注意する→皮膚の硬さによって穿刺針を選びましょう
③穿刺針のオレンジ色のキャップを抜く目盛りを選ぶときの目安
やわらかく薄い皮膚:目盛りハート~1
平均的な皮膚:目盛り2~3
厚くて、かたい皮膚:目盛り4穿刺ペン以外に、器具全体が廃棄できるタイプの穿刺針もある。この場合、青色穿刺針が、0.8mm、黄色穿刺針が1.25mmである
実施
- 手指衛生後、未滅菌手袋を装着する
- 穿刺部位を決定する。測定部位は指先が第一選択である
→指先は穿刺部位を確認しやすく、体内の血糖値の変動がすぐに現れる
耳朶を選択した場合、耳朶を貫通し、針刺し事故になった事例が報告されています同じ部位を繰り返し穿刺すると皮膚が硬くなり、採
血量を得にくくなるため、測定の度に穿刺部位はか
えましょう。 - 穿刺部位をマッサージする。手を心臓よりも下におろして、指の付け根から指先に向かってマッサージする。指先の血流を促進し、血液がでやすくなる
- 指先を消毒用綿で消毒し、乾燥したことを確認する
→穿刺部位がアルコールでぬれていると、血液がにじんでしまい、正しい測定結果が得られない - 穿刺ペンを消毒した部位に軽くあて側面のプッシュボタンを押す。(机の上に指を置くと安定する)器具全体が廃棄できるタイプの穿刺針は、先端のキャップを外し、白い部分を上から下に押す。
- 針が刺さったら、真っ直ぐ上に穿刺ペンを抜く
- 指の第一関節を軽く押し、血液を2.5mmくらいの球状になるよう出す
血液を無理にしぼり出すと組織液が混入し、正確な値が得られないので気を付けましょう
- 血液を吸引して測定する
①血糖測定器が「OK」と表示されていることを確認し、測定用チップの先端を血液に軽くつける
②「ピー」とブザーがなったら測定用チップを指から離し、静かに机に置く。結果が測定されるまで待ち、穿刺部位を、アルコール綿で圧迫止血する
③数値を確認する
直射日光下や測定部位に強い光を当てると、光の影響で測定できない場合があります
片付け
- 測定用チップは、イジェクターを前に押し、廃棄ボックスに捨てる
- 電源を1秒間押し続け、電源を切り保護キャップをつける
- 穿刺ペンのインジェクターを前に押して、使用後の穿刺針をすみやかに外し、針廃棄ボックスに捨てる。(器具全体が廃棄できるタイプの穿刺針は、そのまま針廃棄ボックスに廃棄する)
- 血糖測定器と穿刺ペンを除菌クロスで拭く
- 未滅菌手袋を外し、手指消毒を行う
観察・記録
高血糖症状、低血糖症状の有無
治療と血糖値の変動の比較、正常値との比較
止血
血糖値の結果
参考文献
1)岡庭 豊:看護技術がみえる vol.2 臨床看護技術 第1版.株式会社 メディックメディア.2018
スケール対応(スライディングスケール)
スライディングスケールとは血糖値でインスリン量を加減する目安になる計算尺を言います。
これは、病院によっても、医師によっても違いがあり、患者さんによってスケールもかわってきます。
例えば、「測定値が201以上なら、ヒューマリンR2単位」「主食7割以上なら、スケールの半量食後に投与」など、様々です。
インシデントで多いのは、指示簿を確認せず、思い込みで投与してしまうことです。
血糖値が不安定な患者は投与量も日々変わるので、確実にインチャージし、実施できるよう取り組んでいきましょう。
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