これまでの文献検索・文献検討といえば、症例検討時や看護研究時等に、自分の考えに根拠を持たせるために引用されてきたと思います。これからは、看護実践での疑問点を解決するためや、新しい知識を得るために活用していく必要があります。
そして、看護研究は、看護師として働くうえで、切っても切り離せないものです。
実際、仕事をしながら看護研究をしていくのは、大変なこともたくさんあります。
まずは文献検討のやり方を学び、一つ一つ丁寧に研究が進められるよう頑張ってくださいね!
看護実践に研究成果を活用する意味
病院によって、病棟によって、看護実践方法が違うことは多々あります。
みなさんはこんな疑問を持ったことはないですか??
院内手順はあるけど、指導する先輩によって指導方法が違うよね・・・。先輩が言っていることって、本当に正しいのかなぁ??
- 今行っている看護実践が本当に患者さんに役立っているだろうか?と考えたことはありますか?
- 「時間がないからできない」が言い訳になってませんか?
- 根拠がないのに行っている業務もあるかも・・・それって必要ですか?
- 他院ではすでに実践し解決できている課題かもしれません・・・
- 短時間で効果的に関わる技術もあるよね?
根拠のある看護かどうか考えて行動しているかが大切となってきます。そして、看護実践の場で患者さんが抱える身体的・精神的な症状は様々で複雑です! 手順には載っていないことだらけなのです。そこで、患者さんの安全・安楽に繋がる根拠のある看護を実践するために文献を活用します。
文献検討(クリティーク)とは
文献検討
文献というと一般的に「書籍(本)」「雑誌(ジャーナル)」をいいます。
書籍
雑誌よりもある程度年月をかけてつくられているので、最新の内容でないことも多い。しかし、概念や理論については充実していることが多い。
雑誌
学会誌:所定の査読システムを得て掲載されている研究論文。一定程度の信頼性の水準が保たれている。(例:急性期看護、看護教育、精神看護、在宅看護、看護管理 など)
商業誌:査読がほとんどされていない。研究論文の水準は確保されてない。

査読とは、投稿された論文の原著性(これまでに知られていなかった新知見がある)などを判断し、掲載することが適当かどうかの診査。これを受けているとより信頼性がある。査読内容の規定や程度は学会誌がそれぞれ設けたものであり一様ではないのです。
「文献を批判的に読む」ことが大事
ただ批判するという意味ではなく、活用するためには、その判断に責任が生まれるので、「本当に正しいのかな?」という視点が必要です。
さらに、クリティーク(批評:よい点、悪い点を指摘して、価値を決めること)の視点へ。それにはトレーニングが必要です。
・信頼できる論文集、雑誌に掲載されている論文を読む
・できれば査読されている論文を選ぶ
・研究手法の妥当性はどうか?論文の一貫性はどうか? というクリティークの視点を知る
批判的に読む理由
実践での活用
・看護実践の根拠として信頼できるものかを吟味するため。
(根拠のある看護実践、EBN:Evdence Based Nursingのため)
看護研究での活用
・研究背景の確認、研究テーマの絞り込みの際の参考とする文献は、信頼できる内容でないと、研究の土台がもろくなるため。
・結果の考察では、信頼できる文献を用いることで、自分の研究の信頼性に繋がるため。
研究の分類
文献検討を行うためには研究の分類に合わせて視点のポイントが少し違います。扱うデータによって量的研究と質的研究の2つに分類されます。
量的研究とは測定可能なもの、つまり数値化されてます。
質的研究は測定できないもの、例えば「不安」という感情には「どのような不安」があるかを明らかにする等、語ってもらった内容が文字や文章で説明されていきます。
量的研究クリティークの視点
・研究の結果のみでなく、先行研究の活用や手法など全般にわたり評価する
・将来の発展を見いだしているか。
・何でも否定的な目線で見るのではなく、この研究者はどう考えたんだろうかという目線で考える。
・研究者が気付かなかった点を見極める。
・独りよがりの解釈や欠点探しはさけて、明快な手本を示す
・研究の可能性と限界を見極め、今後の展望を発見する
質的研究のクリティークの視点
質的研究に対しては量的研究の視点と基本は同じですが、得られたデータが言葉なので、その解釈が重要になってきます。
・研究対象者(研究協力者、研究参加者)にとっての現実(現象、体験)が、生き生きと詳細に描写されているか
・方法は、研究が行われた状況を、読者が十分理解して判断できるくらいに、十分に細かく説明をされているか。
・結果や考察が、データに根ざしたものであるか
・研究者がデータの分析や解釈に自分自身の先入観を持ち込んで
いないか。

まずは疑問を持つことが大切です。自分を見つめ課題を知ることで、自分の今後の学習や行動をより良くできる姿勢にも繋がります
文献検索
実際に文献を検索するときには、専門領域のデータベースから、近過去5年、最低3年をめやすに進めれば、最新のすぐれた文献をより早く効率的に得られる可能性が高くなります。
ここでは、インターネットでの文献検索方法を説明しますね。
データベース集を用いた検索
- 医中誌Web
- CiNii
- googl scholar など
インターネットを使った検索の基本
インターネットを使った検索の基本はAND検索・OR検索・NOT検索の3種類です。
まず、キーワードを検索欄に入力し、検索アイコンをクリックすると、検索された情報が表示されます。その後、検索式(AND・OR・NOT)で必要な情報だけに絞り込んでいきます。
AND検索(論理積)は、複数入力したすべてのキーワードを含む検索です。たとえば「心臓病 カテーテル」(キーワードのあいだは、半角または全角のブランク)と入力します。
OR検索(論理和)は、複数入力したすべてのキーワードのいずれかを含む論文の検索で「心臓病 カテーテル」(ORは全角または半角の大文字。ORの前後にスペースを入力)と入力します。
NOT検索(論理差)は複数入力したキーワードのうち、NOTの直後のキーワードを含まない論文の検索で、「心臓病 カテーテル」(NOTは全角または半角の大文字。NOTの前後にスペースを入力)と入力します。
研修担当のみなさまへ
この研修の“指導観”は、講義を通して、患者さんの安全・安楽に繋がる根拠のある看護を実践するために、「日常の看護実践における疑問や問題について、文献を調べて解決する手法を指導する」ことです。文献を活用する責任は、「この研究が信頼できるものか?」「自分の看護実践に活用できるものか?」という視点で検討していくことが大切で、これは、研究を批判的に読むことで、クリティークするトレーニングに繋がることや、今後、看護研究の実践に役立つのだということを伝えるのが大切となってくると思います。
研修内容に、研究成果を1例出して、研究抄録の項目に添って文献を検討したら、実践の学びが深まると思います。
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