膀胱内留置カテーテル
はじめに
バルンカテーテル挿入は、新人看護師研修では必須で、病院によっては研修を受けた後、モデルで練習を繰り返し、技術を獲得します。実際に患者へ行うときは、先輩看護師の見守りの元実施し、OKが出てやっと独り立ちできる高度な技術になります。(※病院によって違います)
OP室なら、全身麻酔の患者さんのほとんどに、バルンカテーテルを留置します。そのため、OP室勤務では、他の病棟よりも、他の技術よりも、早くに獲得したいと思う技術になるかもしれません。
今回は、実際に活用できる“ポイント”をわかりやすく載せています。
新人看護師さんだけでなく、誰にでも学習できる内容にしていますので、ぜひ活用してくださいね!
留置の目的と適応
目的
カテーテルを尿道から膀胱内へ挿入し、持続的に尿を排出させることを目的として留置する
適応
・急性の尿閉、下部尿路閉塞を有する際
・尿量の正確な管理を必要とする際
・周術期
・安静の必要な際
特徴
男性
・尿道が長い(16~20cm)
・尿道がS字を描いている
・尿道を取り囲む前立腺が年齢と共に肥大し、尿道が狭くなることがあるので、しばしばカテーテルが挿入困難となる
女性
・尿道は短い(4~5cm)
・走行は直線的であり、比較的容易にカテーテルを挿入することができる
・尿道が短く膀胱に細菌が侵入しやすいことと、外尿道口から、膣・肛門(汚染源)までの位置が近いという理由から、尿路感染症を生じやすい。
膀胱留置カテーテルの構造
バルーンの滅菌水を注入して膨らませることでカテーテルを膀胱内に留置することが可能となっている。
チーマン型は、コシが強いため、前立腺肥大症など挿入困難な場合に用いられる。
3Werは、血尿が強い場合などに用いられ、カテーテルの閉塞を防ぐために膀胱洗浄用ルートがある。
尿道カテーテルのサイズ
尿道カテーテルのサイズは、患者さんの体格や病態、挿入目的に応じて選択されます。
一般的に成人では12~18Fr
尿道カテーテルが太いほど患者さんの苦痛は大きくなり、尿道損傷のリスクが高まるため、尿からの流出が得られる範囲で、できるだけ細いサイズを選択する。
膀胱内出血がある場合は、通常のカテーテルでは膀胱内に生じた血塊でカテーテルが閉塞する可能性があるため、太めのカテーテルを用いる。
膀胱留置カテーテル挿入時のポイント
カテーテル挿入時のポイント
・ゼリーをしっかりカテーテルにつける
・患者さんに口で深呼吸を行ってもらう

深呼吸によって尿道括約筋が弛緩し、カテーテルが挿入しやすくなります。
・男性の場合:尿道の屈曲を極力減らしましょう
陰茎を把持している手の中指と薬指で、陰茎が身体に対して垂直になるようにしっかりと上に伸ばしましょう。
・カテーテルの挿入に抵抗を感じたら陰茎の角度を身体に対して60°に変えて挿入しましょう。
カテーテル挿入~カフ注入までのポイント
・カテーテルを挿入し、尿の流出を必ず確認する
・尿が流出してきたら、さらに2~3cm奥へ挿入する
・尿の流出があっても注入中にカテーテルが抜けてくることがあるので、注入はゆっくり行い、痛みがないか患者に確認する
・注入したバルンが抜けてしまっていることがあるので注意する。
カフ注入後~固定までのポイント
・カテーテルを抵抗がある部分まで引いておく
・バッグを膀胱よりも低い位置に固定していく
・カテーテル・チューブが折れていないことを確認する
・カテーテルが引っ張られるなど圧迫などにより、尿道口や粘膜が傷つかないように性別に合わせて固定する。
固定について
男性
陰茎を頭側に向けカテーテルに若干の余裕をもたせてテープなどで下腹部に固定する
⇒下向きに固定すると、尿道がカテーテルに圧迫され、潰瘍や尿道皮膚ろうが形成されやすくなるため
女性
カテーテルに若干の余裕をもたせて、テープなどで大腿内側の固定する
⇒カテーテルを膣から離し、膣分泌物によるカテーテル汚染のリスクを最小限に抑えるため
(パジャマの場合:左右の下腹部)
カテーテル留置に関連する合併症
尿道損傷
カテーテル挿入時、無理な挿入によって生じることがある。
⇒抵抗があった場合は無理はしないこと。

バルンを尿道で膨らましてしまうことで尿道損傷をきたし、思わぬ出血を認めることがあります。
⇒手順・ポイントを理解しましょう。
尿路感染症
原因:尿路に侵入した細菌により、膀胱・尿道などに感染症が生じる
症状:多くの場合無症状
・感染のリスクが高い患者さんは症状が出やすくなる
<予防>
・尿の流れが滞らないようにする(飲水、体位を変える)
・カテーテルや蓄尿バックを清潔に扱う
<対策>
・抜去とともに寛解する場合が多い
膀胱結石
原因:カテーテルを留置すると尿中の物質が結晶化しやすくなり、成長すると膀胱結石となる
症状:膀胱刺激症状(下腹部痛。・尿意など)
・混濁尿(濃尿・血尿)
・尿漏れ
<予防>
・尿の流れが滞らないようにする(飲水、体位を変える)
<対策>
・医師に症状の報告し、対処について指示を仰ぐ
膀胱の廃用性萎縮
原因:・カテーテル留置により膀胱壁の伸展する能力が低下し、抜去後も膀胱が萎縮したままになる
症状:カテーテル抜去後の頻尿など
<予防>
・可能な限り早期抜去
<対策>
・水分摂取、運動などで膀胱の伸展性の回復を図る
陰部潰瘍
原因:・カテーテルを同じ場所に固定していると、尿道の同じ場所に圧力がかかり続け、潰瘍が生じる
症状:・陰部の発赤、出血、痛み
<予防>
・毎日カテーテルの固定位置をずらす
・ゆるみをもたせて固定する
<対策>・医師に症状の報告し、対処について指示を仰ぐ
膀胱留置カテーテルの管理
・陰部を清潔に保つ
・毎日陰部洗浄を行う
・体位変換→同一の体位により尿の流出が滞り、閉塞や感染症を起こすことがある
・水分摂取を促す(飲水制限がない場合)
・十分に水分をとり尿の流出を促し、感染尿を膀胱内にとどまらせない
・蓄尿袋は常に腰より低い位置に置き、尿の逆流を防ぐ。また、蓄尿袋が床に直接つかないように固定する。
・尿を捨てるときは、蓄尿袋の排液口が容器に触らないように注意する
・カテーテルの交換は、最低月1回とし、尿流出不良や閉塞が疑われるとき、悪臭があるときは適宜交換する
さいごに
病棟でよく見かける光景があります。それは、バルンカテーテルが入っている患者さんが、歩いている姿です。しかも、ハルンバックにカバーをせずそのままで。
その光景は、慣れてしまったらおかしいとは思わず、疑問とも思いません。
患者さんにお見舞い客がくることも想定し、ハルンバックには必ずカバーを。尿器には尿器カバーを付けれるようお願いします(*^-^*)
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